まいど。らっしゃい。

仕事の帰りにひとり、一杯呑んで帰るのが好きだった。

もちろん夫や同僚、友だちと一緒も楽しい。

でも、一人で呑みに立ち寄るときには、何かから解放されるような自由を感じていた。

 

決まって同じ串カツ屋さんに行く。

のれんをくぐると、大将が“まいど。らっしゃい”と迎えてくれる。

いつも決まって頼むセットがあった。ビールに牛串3本、玉ねぎ、れんこん、

ししとうで1,000円ぽっきり。カリッと揚がった大将の串カツは本当に本当においしい。

二度付け厳禁の張り紙も懐かしい。

 

内弁慶外地蔵なわたしは、人と仲良くなるまで時間がかかる。でも、そのお店では不思議とリラックスして話ができて、何人かの常連さんと仲良くなった。

その中の一人に、とっても素敵な先生がいた。いつもお化粧ばっちりで太ももが見えるくらいの短いスカートが印象的。たばこを吸いながらカウンターの隅っこでゆっくりとお酒をのんでいる。いつの間にか話をするようになって、フリースクールの先生になりたいという話を聞いた。彼女のフラットな視点と面倒見の良さ、ふわっと感じるあったかさ。そして、こうあるべきに縛られていないんだろうなと思った。こんな先生、本当に素敵だなと思った。

他にもたくさん素敵な人に出会った。

 

大将もなかなかかっこいい。

ある日、お客さんの一人が上の彼女を嫌な感じでいじりだした。

わたしは何もできなかった。そこへ大将が「うちの大事なお客さん困らすんなら、さっさと帰って」とはっきり、きっぱり言った。ハラハラしながらも、心の中では拍手喝采。大将、すごいと思った。

 

今考えると、居心地よくいられる理由は大将なんだな。

ふと、さっき大将に電話をかけてみたけれど、つながらなかった。電話番号が変わっているし、まさかメキシコからかけるとも思ってないだろうな。

元気かな。

 

コロナウィルスの問題で、きっと自粛期間があるだろうけれど、続いていてほしい。

なかなか行くことはできないけれど、とても大切なお店です。